硫化水素を用いたCu，Zn，Ni混合めっき廃水の選択的硫化による金属硫化物の分離

摘要

電気めっきは，電子工業をはじめ，自動車工業，化学工業などさまざまな産業において用いられており，各金属めっき洗浄工程からは重金属含有廃水が排出される。現在，これらの廃液の一般的な処理方法として，水酸化物化処理が行われている。この処理法により発生する水酸化物スラッジは含水率約85％と高い数値を示し，その排出量は全国で年間6万5千トンに上り，現在，その多くは埋立て処分されている。近年，埋め立て処分場の逼迫が問題となっており，産業廃棄物の埋め立て費用が年々高騰している。また，金属資源の中には可採年数が数十年と残りわずかなものも含まれていることから，スラッジの減容化と同時に，金属の再資源化が望まれている。しかしながら，通常，スラッジ中のCu，Zn，Niなどの重金属成分は混合状態で存在しているため，金属の分離回収による金属の再資源化は非常に困難である。