『教育格差： 階層·地域·学歴』

摘要

コロナウイルスに翻弄された2020年も、あと2ヶ月ほどで終わろうとしている。今年は、本書がテーマとする「教育格差」の存在をまざまざと見せつけられた1年だった。3月に一斉休校が始まり、子どもたちは自宅での勉強を余儀なくされた。学校によるサポートは必ずしも十分でなく、まさに家庭任せの状況となった。もちろh、子どもの面倒を十分に見ることのできた保護者もいただろうが、他方で仕事が忙しいなどの理由で十分に子どもの相手をできなかった保護者もいただろう。学校がなくなることで、家庭の教育力の差が顕わとなってしまったのである。こういう事態になることは、公教育である学校の社会的意義を考えたことのある研究者であれば、誰でも予想できたことだ。だが、政策担当者を含めて社会一般に共有されていたかと言えば、本書も指摘しているように疑わしい。この点で、「教育格差」について啓蒙する本書の存在意義は大きいと言えよう。