『地域と統計＜調査困難時代＞のインターネット調査』

摘要

わが国の調査環境調査の嚆矢とされる1978年の九大調査が社会の変容に根差す構造的性格のものとして統計界に警鐘を鳴らした調査環境問題は、その後回答率の低下•不詳の増加として顕在化し、今日、統計調査そのものの存立を揺るがしかねない脅威となっている。わが国では不詳は主として調査環境の実態の観点から論じられ、結果に及ぼす影響等の定量的評価が統計実務•学術的課題として関心を集めるようになつたのは比較的最近のことである。また、個人情報保護の動きを受けて住民基本台帳や選挙人名簿の閲覧が制約される中で、学術目的の調査も含め民間の統計調査はネット調査へとシフトしつつある。このような動きを受けて、ネット調査をはじめ無作為抽出が担保されていない調査結果が持つバイァス補正等への関心も高まっている。