誤差率について

摘要

筆者は大学時代、大内兵衛先生の財政学の講義を聴講した。先生は博識で、財政学のほか、時事問題、欧米の経済事情などを講義の合間に随時話された。ある時、要旨次のことを話された。「本当の経済学者とは、GDPや物価指数など重要な経済指標について、将来を予測して、それがビタリと当たる人である。経済学には労働価値説、効用価値説など価値論争があるせ、これはどうでもよいことだ。将来推計をしてピタリと当てることが重要で、そのために君達は統計学をよく勉強しなくてはならない。」筆者は大内先生のこの話に感動した。本当の経済学者になるためには統計学の勉強が必要と、数理統計学を勉強し、古谷弘先生のゼミに参加して計量経済学も学んだ。その後、統計の道を進むことになり、公務員となって総理府統計局に入局した。当時、統計局長は一橋大学の森田優三先生が兼務されていた。森田局長は統計局の重要な任務として、統計調査の誤差率を最小限にし、かつそれを安定的に維持することの重要性を強調された。先生自身も調査誤差に関する論文をいくつか執筆されている。統計調査はセンサスとサンプル調査とに区分されるが、統計調査については調査誤差が、サンプル調査については調査誤差のほか推定（estimation)誤差が問題となる。サンプル調査の報告書には必ず誤差率のことが記載されている。