農業用パイプラインの圧力変動緩和装置

摘要

農林水産省農村振興局が実施している農業農村整備事業で敷設された基幹的な農業用パイプラインの総延長は約1万2,000kmに達している(農村振興局、2008)。農業用パイプラインの管体の材質は、パイプラインの水圧区分や送配水方式に応じて選定される。圃場に灌漑用水を配水する末端の支線水路では、設計水圧(=静水圧+水撃圧)が1MPa以下であれば、初期費用が安価な塩化ビニル管(PVC)が使用される場合が多い。PVCは農業用パイプラインの総延長の約20％を占めており、末端配水系を中心に整備された口径500mm以下の農業用パイプラインの賦存量のうちの32％がPVCであると言われる。PVCは耐久性、耐食性に優れているが、衝撃に弱い欠点がある。著者が調査した限りでは、畑地灌漑を行っている受益地区ではスプリンクラーを回すために高圧の水を必要としており、そのような高圧のパイプラインを管理している団体(土地改良区という)においては、PVCの管破損事故の件数が年々増加傾向にあり、維持管理上の問題となっている。