大学間競争の設計に根本的な検証を: システム全体をみない“改革”がもたらす悪夢を避けるために

摘要

いま必要なのは,国立大学法人,COEなど,個別の見直しではなく,全体としての見直しだ.文科省は,事業仕分けを契機として「国立大学法人化後の現状と課題について（中間まとめ）」（2010年7月）をまとめたが,「法人化」の本格的な制度設計には潜み込んでいない.COEにしても,その成果の多寡よりも,制度としてのCOE自体を問わなければならない.本来であれば,運営費交付金や科研費,科学技術振興調整費,その他競争的資金と,COEなどの全体構造を根本から検証し直す必要がある.これらはセットとして導入され,存在するのであり,別々のものではないはずだ.少なくとも,個々のプログラムの成果 の評価ではなく,政策そのものの評価（政策評価）をすべきだ.日本では政策の事前評価はあっても,事後評価が十分でない.