商業化される国際会議:失われゆくソサイエティ

摘要

多様化する国際会議科学における国際会議の起こりは1860年，ドイツのカールスルーエで開かれた化合物の構造・分子式に関するものであった。古参研究者の誤った理論が幅を利かせ，若きアボガドロ1が提唱した理想気体の概念が大不評だったというエピソードを読むと，今も昔も変わらぬ科学者集団の姿がみえて感慨深い2。会議そのものは失敗に思われたが，これがきっかけで10年後にメンデレーエフおよびマイヤーの元素周期表ができたことなど，われわれが学べる点も多いと思う。それから150年経ったいま，国際会議はどのようなイベントに進化しただろうか。国際会議と聞くと，国際連合 総会のような場で科学者が議論する姿を想像するかもしれない。大ホールで聴衆を前に講演する姿 かもしれない。科学が商業化された現在，こうした想像をはるかに超える多様化が進んでいる。