キノコは人を操るか？

摘要

自分の内側から何ものかに支配される，いや支配されないまでも，自分の行動や思考や感情に干渉してくるとしたら，いったいどんな気分がするものだろう。ァメリカの作家，ブライアン·オールディスのサイエンスフィクシヨン『地球の長い午後』（原題："Hothouse", 1962)に,人間に寄生するアミガサタケが登場する。遠い未来，太陽が終末期に近づき，地球は自転をやめてつねに同じ半球が太陽を向くようになった。動物のようにふるまう奇妙な植物が支配する太陽の沈まない暑い世界で，人類は樹上生活をする弱々しい生き物としてようやく生き延びていた。好奇心旺盛で向こう見ずな主人公のグレンは，グループを追放されたある日，突然頭上から落ちてきたアミガサタケに取り付かれる。