マラリアと戦争

摘要

パプアニューギニア東部にあるニューアイルランド島を両親と訪問したのは1990年の夏。父は戦時中，大日本帝国陸軍兵士としてこの島に2年近く滞在した。その跡を訪ねる旅だった。ニューアイルランド島は，太平洋戦争中日本軍の拠点の1つだったニューブリテン島ラバウルのすぐ向かいに横たわる細長い島。オーストラリア北東部のケアンズからパプアニューギニァの首都ポートモレスビー，さらにラバウルへと乗り継ぐたびに飛行機は小さくなり，最後に乗ったナマタナイ行きの飛行機は十数人乗りのプロペラ機で，着陸した滑走路は砂利敷きだった。町にはやせぎすのォーストラリア人が経営する4部屋しかない宿が1軒。彼に滑走路のことを言うと，「パイロットはベトナム帰りだから大丈夫だ」と笑った。彼自身もベトナム帰還兵だったことはあとで知った。