War on Science:反科学は科学の装いでやつてくる

摘要

今回は，米国の科学技術と政治をめぐる話題を 取り上げよう。米国では科学技術と政治の話の中 で，しばしばWar on ScienceまたはRepublican War on Scienceという言葉が登場する。要するに 「科学に対する戦争」なのだが，科学技術を攻撃 すべき対象とみなす反科学の運動である。米国で は長いあいだ，政界や宗教界から科学に対する戦 争が続いている。とくに有名なのが共和党による もので「共和党の科学に対する戦争」とも呼ばれ る。典型的には，進化論の祀絶.気候変動への異 論.ワクチンへの疑義，政治学研究の否定等々の 攻撃をする。それだけでなく.政治家が反科学の 信念にもとづく立法を試みている。さらに，米囯 初の反科学主義大統領だとも言われるトランプ大 統領の登場と前後して.科学に対する戦争は新し局面に入り，反科学が優勢になりつつあるよう に兌える。重要なことは.科学に対する戦争の様 相が，単純な科学の否定から，巧妙なレトリック により，からめ手から科学を攻撃するようになっ てきたことである。ここでポイントになるのか， 政治家のみならず一般の人々が抱く，科学とは何 か，どのような特性をもつ活動なのかといった科 学観である。