市販製品一に含まれるマイクロプラスチックについて

摘要

「テレビや新聞でプラスチックごみが話題に上らない日はないのでは」と思うくらい.最近この問題は高頻度で報道されています。死亡したクジラの体内から大量のビニール袋が出てくる写真や動画には，生物保護のために何かしなければと視聴者に訴える強い力を感じます。世論に敏感な大手企業は，プラスチック製ストローの全廃やPETボトル素材を植物性にすることを宣言し，マイクロビーズを含むリンスオフ化粧品の輸入や販売を禁止する国も出てきました。一度環境中へ出てしまったプラスチックごみを拾い集めるのは相当の労力と費用がかかりますし.それが微細化したマイクロプラスチックの回収は困難を極めます。これ以上，プラスチック汚染を進行させない有効な手立ては「発生源を絶つ」ことであり，微小なプラスチック片を含む市販製品の流通を規制することは自然な流れといえるでしよう。ただ，どういう製品にどのサイズのプラスチック片がどの程度含まれているのか，具体的かつ詳細に調べた研究報告は案外少ないものです。規制後の効果を定量的に検証するにはこうした基礎データが不可欠と考え，本研究室ではドラッグストァなどで市販されている「歯磨き粉」「洗顔料」「角質落とし」を入手して分析を行いました。始めに試料約3 gを秤量し，粒径1000, 250, 63 μmの各ふるいを直列につないだものに人れて通水しました。その結果，実験に供した市販品17検体中，9検体に微粒子の存在が確認されました。粒子の濃度(中央値)は，歯磨き粉が2.4%.洗顔料1.3%,角質落としは15%でした。また.粒径分布はいずれの試料も250～1000μm, 63-250μmが卓越し.1000 μm以上の微粒子はみられませhでした。ただし，一部の検体を対象に目の細かい20μmのふるいを追加して実験したところ，20～63μmの粒子の重量割合が全体の20～60%を占めることがわかりました。水生生物への影響を考えた場合，20μm以下のより微小粒子の存在を正確に把握する必要性があると思われます。