心にのこる1冊-中尾佐助著『栽培植物と農耕の起源』

摘要

本書は，私にとって「心にのこる1冊」というより，むしろ「人生をかえた1冊」といってよい．最初に読んだのは，刊行されてまもない1966年2月，私が京都大学農学部の2回生のときのことであった．この本は，日本文化のルーツが照葉樹林にあるという，ユニークな照葉樹林文化論を展開したことで大きな関心を集め，今なお版を重ねている名著である．しかし，私自身は不勉強だったせいか，当初，さほど大きな感銘をうけたわけではなかった．実際，ぺージ数の少ない新書なのに，全部を精読しなかったという記憶が残っている．にもかかわらず，この本のなかの一節が妙に心に残った．