有限体積法に基づく Large Eddy Simulationのための対流項離散化スキームの検討 建物屋上面からの排ガス拡散への大気安定度の影響 その2

摘要

近年使用例が増加している有限体積法に基づいたLESを行う際に，最適となる対流項の離散化スキームについて検討を行った。結果を以下にまとめる。1) 運動方程式の対流項の離散化は，その他のスカラー量に比べて結果に大きく影響し，数値拡散が少ない方が実測との対応は良くなる。しかし，最も数値拡散の少ない線形補間(Linear)では数値振動が発生して非現実的な解となる可能性がある。そこで数値振動のみを選択的に抑制するように風上化(Filtered-Linear)を行うスキームを用いることで精度を維持しつつ数値振動の抑制が可能である。2)運動方程式の対流項スキームにFiltered-Linearを用いた場合,濃度輸送方程式の対流項スキームを変化させたことによる差異は小さく，どのスキームにおいても著しく予測精度が低下するということはみられなかったが，有界性を満たすTVDスキームが比較的良好な結果となった。状況によっては有界性を満たさないスキーム(Linear, Filtered-Linear)では分布形状を正しく評価できない可能性や，計算が不安定になる可能性があるため，注意が必要である。3)温度は，浮力項を介して運動方程式と密接に関わるため，計算の安定性を大きく左右する。したがって，温度輸送方程式の対流項には安定性に優れたTVDスキームが有効な選択である。4)運動方程式の対流項にFiltered-Linear,濃度および温度の輸送方程式の対流項にTVDスキームを用いた計算結果は，大気安定度が安定•中立の双方のケースにおいて*測結果を精度よく再現しており，少なくとも本ケースおよび同等なシチュエーションにおいては，これらのスキームの組み合わせを用いた有限体積法LESによる汚染質拡散の数値計算は，実用に十分な精度を有していると言える。