巻頭言

摘要

今月号の編集作業が佳境に入つた3月11日は、言うまでもなく10年前の2011年に東日本大震災が発生した日だ。甚大な被害を受けたエリァに比べれば、東京などは一部に深刻な人的被害も発生しつつ「激しく揺れた」「物が落ちてきた」「交通網がストップした」「店頭から日配品を中心に食料が消えた」という程度の印象だったが、しばらくの間、街の夜から灯りが消えた光景は今でも鮮明に思い出す。このままずっと、街の夜が暗いままなのではないかという不安にも苛まれた。それはやがて時間とともに解消されるのだが、それから10年を経て、似たような不安に包まれている。新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言により、ここ何年も明るいのが当たり前と思っていた街の夜が、再び暗いのだ。飲食店などに求められる20時での店じまいが、それに拍車を掛ける。