赤ちゃh星の産声

摘要

銀河中心分子雲帯(CMZ)は，天の川銀河の中心から約1000光年の範囲にわたって分子ガスが広がる領域だ。CMZでは,銀河の一般的な領域にくらべて，星の形成効率(単位時間あたりにつくられる星の質量)が低いことが知られていた。一方，最近のアルマ望遠鏡による観測から,CMZにおいて，星の誕生に結びつきそうな，ガスが密集した場所(高密度ガス塊)が大量に見つかっていた。しかし，これらの高密度ガス塊が，実際に“星の卵”である原始星をもつかどうかは明らかになっていなかった。国立天文台のルー博士らは，アルマ望遠鏡を用いて，多数の高密度ガス塊を対象に，「アウトフロー」が見られるかどうかを調査した。アウトフローは，生まれたばかりの原始星から噴きだす高速のガス流で，いわば原始星の“産声”のようなものだ。その結果，800個もの高密度ガス塊で，アウトフローをともなう天体が43天体もあることが明らかになった。CMZは，星形成のきわめて初期の段階にあり，今後，多数の原始星が生まれてくるのではないかと博士らは考えている。