脳損傷の治療に光

摘要

急性の脳損傷では，体内を循環している白血球が損傷部である血管の周囲や脳内に移動する。その結果，減少した血中の白血球を補うために，骨髄では，血球のもととなる「造血幹細胞」から血球がつくられる。しかしながら，脳損傷が骨髄での血球の産生にどのような影響をあたえているか，あるいは，骨髄での血球の産生が脳損傷ヘどのような影響をあたえるかについては，よくわかっていない。今回，天津医科大学のサミュエル·X·シ博士らは，脳内出血患者および脳内出血モデル動物を用いた研究から，脳損傷が生じた際，骨髄では造血幹細胞から「Ly6C~(low)単球」とよばれる細胞がさかhにつくられることを見いだした。これらの細胞は脳の損傷部へと入りこみ，「活性化マクロファージ」とよばれる細胞になることで，神経の炎症や脳損傷を抑制することが明らかになった。また，脳損傷がおきると，特定の神経が骨髄におけるLy6C~(low)単球の産生を促進していることもわかった。この結果は，特定の神経にはたらく薬剤の投与によって，骨髄からのLy6C~(low)単球産生が増強される可能性を示している。