人と社会と人工知能技術の関係における倫理: 対話システムとループ効果から考える

摘要

科学技術と社会の関係を考える際に考慮すべき点はいくつかあるが、いわゆる科学技術社会論（science and technology studies： STS)分野において普遍的な重要性が認識されているのは、おおむね以下のような諸点である (総説としてたとえば文献[1,2]を参照)。第1に、研究開発側の視点や価値観だけで考えたり対応したりすることの限界である（専門家主義批判）。技術の使途や社会での影響は、技術の特性だけで決まることではない。社会の中で使われていくうちに、社会の中での技術の「居場所（ニッチ）」が形成されていき、定着していく（またはすたれていく）。したがって研究開発の初期あるいは中期の段階から、利用者• 使用者の視点や価値観を取り入れる場や仕組みが必要である（研究開発の上 '流[川上]への参加)。