西洋絵画に描かれた建築要素の二次元的な構成の認知評価の研究

摘要

The objective of the research is to understand the cognition of the Western paintings, which represent three dimensional architecture and spaces in order to obtain the fundamental knowledge on the reception of two-dimensional spatial representation. The Indication Method was used to quantitatively analyze the architectural and other elements in the paintings, their composition, and the impression they give to the viewers. The research clarified the elements which characterize the paintings, including their categories and the degree of impression. The observation on their composition, moreover, showed the implication of the element structure and the spacial depth in the composition in two-dimensional representation in Western Paintings.%西洋絵画において建築や空間を構成するその他の要素の二次元的認知の特徴を明らかにするために、対象絵画39点について、指摘法実験を行った。分析結果の傾向を以下に述べる。1) 男性と女性の被験者の一部の指摘傾向に差異が見られた。具体的には男性は通常背景や「地」と見なされる自然物や環境要素に着目し、女性は人物に注目する傾向があった。2) 絵画を特徴づける要素の構成を明らかにするため、各絵画の指摘率の低減傾向を5タイプに分類した。象徴性が高く、強い「図」となるような要素が一つないし数個あるもの(一点象徴型、複数象徴型)、または飛びぬけて目立つものがなく、多様な要素によって構成されるもの(分散型)などに分けられ、構図の配置との関係をドットマップ図に示した。絵画を特徴づける要素は絵画上の二次元空間での奥行きの広がりにも関係することがわかった。3) 指摘された要素の構成を捉えるため、絵画毎に指摘要素を「建築」「人物」「榭木」「空」「その他」の5つのカテゴリーに分類した。それらの指摘率を類似度としてクラスター分析を行い、4つの要素構成型が得られ、その特徴を明らかにした。4) 絵画の中で指摘が集中する注目域の特徴を明らかにするため、要素のカテゴリーは問わずに指摘要素の画面上の配置を類型化し、グリッド解析図を作成した。この注目域分布型は6タイプに分けられた。5) 要素構成型と注目域分布型の相互関係をマトリックス表に表し、それぞれの絵画の特徴を読み取ることができた。建築が「図」(主役)として認知される絵画は、中央帯型のように水平性の強い構図がよく用いられていた。6) 指摘率は高いが指摘度は低い要素を「仮面の主題」と定義した。仮面焦点は背景的な要素でありつつ「主役並に注目を集める図的な地」であり、画面の周縁付近に位置することで、見る人の目を絵画の主題に戻す役割があると考えられる。7) 注目域分布型の〈十字形型〉や〈三角形型〉は「仮面の主題」がない絵の割合が高く、主題がわかりやすい構図と考えられる。一方〈右下分布型〉や〈中央帯型〉は「仮面の主題」を持つ絵の割合が高かった。20世紀以降に描かれた絵画は「仮面の主題」を持つ絵の割合が高い傾向が見られた。我々が西洋絵画を鑑賞するときに、その絵画を特徴づける印象深い要素を、その種類や印象の強弱も含めて明らかにした。さらにその要素の配置構成との関係を読み取ることで、絵画の二次元的表現において要素の配置構成上の意味や構図の空間的広がり·奥行きとの関係を示すことができた。