居住者の時空間共存性に基づく距離測度

摘要

本稿では，居住者の時空間分布の重なりをもとに新たな地域間の距離測度であるDM_SCOREを定義し，基礎的な性質について考察するとともに，DM_SCOREを用いて都市空間分析を試みた。具体的には，①DM_SCOREは地域ごと，年度ごとの人々の移動性向を反映している距離測度であることを示した。②空間相関分析へ適用し，社会属性情報を伴う変量の空間的な連担性を理解する上でDM_SCOREが優れていることを示した。③人口密度関数を用いた分析から，DM_SCOREの平均値は，都心性(都心部へのアクセシビリティ)を表す指標として優れていることを示した。④空間相互作用モデルへ適用し，DM_SCOREが相互作用を記述する上で優れた距離測度であることを示した。⑤DM_SCOREの値をもとにクラスター分析を用いて空間分割を行い，得られた空間クラスターの境界が，県境や区境などの行政界や鉄道路線域などと一致するという興味深い結果を得た。⑥社会統計調査データを用いた分析から，住宅に関する肯定的な意識を抽出する際にはDM_SCOREを用いた空間分割が有効であることを示し，DM_SCOREが居住者の意識や価値観の類似性や連担性と関連している可能性を示した。以上，DM_SCOMEを用いれば，従来までの距離測度とは異なる視点から都市空間構造を読み解くことができる可能性のあることを示した。%Distance measures, such as Euclidean distance, network distance, and time distance, have been used for various urban models. In this paper, we propose a novel distance measure based on the spatiotemporal distribution of residents, which is called "Distance Measure based on Spatiotemporal Coexistence of Residents (DM_SCORE)". It is defined as a square root of Jensen-Shannon Divergence, and can be calculated using person trip survey data. We discuss the difference between DM_SCORE and ordinary distance measures, and apply it to some urban models. The results of some numerical analyses using actual data demonstrate that DM_SCORE can be of great value in being incorporated in urban models.