モバイル空間統計を活用した都市拠点地区の人口特性分析に係る研究: 昼夜間を通じて都市の実態人口分布を捉える新たな統計手法

摘要

人口減少や高齢化などに伴い都市の人口構造が大きく変化するなか、限られた公共投資をより効果的に配分して公共施設整備や公的サービスの提供を行うことが社会的要請となっている。2014年に改正された都市再生特別措置法においても、持続可能な都市経営に向け、都市機能の立地適正化によるコンパクトなまちづくりを推進するための制度的枠組みが整えられたところである。こうした「再編型」のまちづくりは従来にも増して多様な利害調整を伴うものであり、都市の実態を正確にとらえながら施策の検討や評価を行うことが求められる。従来、都市計画やまちづくりに係る施策は、主に国勢調査等による居住人口や従業者数、または経済センサスや商業統計等による事業活動に関わる統計情報が活用されてきたが、これらの既往統計は頻度も少なく、各種施策の短期的なインパクトを捉えることはできない。また、夜間人口であれば、ーか月ごとに集計される住民基本台帳に基づく統計が有効であるが、一日を通じたダイナミックな人口分布の変化を捉える公的統計は、10年に一度程度、都市圏ごとに行われるパーソントリップ調査(以下PT調査)しかないのが現状である。昼間を含む人口分布の実態を推計する手法については、古くは直接的な計測に基づき滞留者を推計する辻によるー連の研究があるほか、PT調査をベースとしたものとしては、GISデータを組み合せて推計を行う大佛による研究や、データ同化手法を用いて詳細な人の動きを推定する中村·関本らによる研究など、研究の蓄積がある。また近年では、羽藤や生形·関本などGPSを搭載した端末(携帯電話のGPS機能含む)を用いて都市における人の移動の把握に係る研究も進んでいる。このように、都市における人口分布の推定に係る研究は大きく進展しつつあるが、広く活用される一般的手法として確立されるには至っていない。%This study mentions the possibility of the application of "mobile spatial statistics", which frequently comprehend the actual population based on the operation data of the mobile phone including the heat of the day. The first part indicates the analysis model of the districts combined with another questionnaire survey of city center of Kashiwa city, Chiba prefecture. The second part examines the three models which compare the base stations in Chiba prefecture and analyze only by using mobile spatial statistics. This study indicates that mobile spatial statistics makes it easy to comprehend the distribution of population.