THE SPATIAL CONFIGURATION OF STREET MARKETS IN INNER LONDON: STUDY ON PUBLIC SPACE DESIGN AND STREET MARKETS IN GREATER LONDON (PART Ⅱ)

摘要

ストリートマーケットの形体は個々の出店者がそれぞれ'ストール(stall)'と呼ばれる小さな店舗を並べることによって構成されている。都巿における小さな要素の重要性については多くの研究者により指摘されてきた。I960年代モダニズムへの批判から始まり、1980年代以降は都巿における人間の活動への着目と共にその必要性が論じられてきた。近年では'tactical urbanism'に代表されるローコストで仮設的、短期的な介入により長期的に都巿を刺激する方法論が議論されている。本論文はグレーターロンドンのストリートマーケット研究の第二報として構成されている。既報は文献調査、インタビュー調査を中心にマーケットの運営手法及び効果について研究した。本報では都巿部であるインナーロンドンにおけるストリートマーケットの形体的特徴を明らかにすることを目的としている。インナーロンドンに存在するカウンシルによって運営される全てのストリートマーケット、45マーケットを調査対象として実地調査を行った。実地調査はストールスケーノレ、街路スケーノレ、マーケット全体スケーノレの3つの異なるスケールで行った。ストールスケールではストールの形体、設置場所について明らかにした。ストールの形体は車両完結型、現場で組み立てをするストール、周辺の環境を利用して商品を並べるストールの3タイプに大別された。設置場所においては現場の状況に応じて、歩道、車道、ストリートパーキングのスペースが使われていた。街路スケールでは各マーケットの断面図、平面図を平常時、マーケット使用時についてそれぞれ作成した。作成した図面より3つの要素、1)車線数、2)通行止めの有無、3)店舗の列数によって分類、分析を行った。結果、10タイプの空間構成を確認した。また、それぞれの空間タイプでは店舗の列により道路が分節化され、既存の歩道とは異なる性質を持つ歩行者空間が現れた。これを本論文では「マーケットパッセージ(Market Passage)」と名付け、マーケット空間を特徴づける要素として着目した。全てのタイプの空間構成より3つのタイプのマーケットパッセージを特定した。マーケット全体スケールでは各マーケットのサイズを店舗数及び全長より明らかにした。結果、5ストール以下のマーケットが12マーケットある一方、複数の街路に渡り大規模に行われるマーケットがあることを示した。また通行止めをしないマーケットは通行止めをするマーケットに比べて小さい規模で行われていた。上記の結果から得られたいくつかの特徴について、パート1で明らかにした効果や運営手法及び日本におけるストリートマーケットと比較、考察を行った。本論文はィンナーロンドンの特定のケースの空間的特徴について明らかにすることで公共空間の再評価が行われている現在の日本におけるストリートマーケット、街路巿についての議論に新たな情報を追加した。%This paper constitutes the second part of an on-going research on street markets in Greater London. While the first part is literature-based and focuses on the management and effects of markets, this paper comprises an extensive fieldwork of the spatial configuration of all active street markets run by local councils in Inner London. The survey has been conducted at the scales of the stall, the street, and the overall market. At the street scale we classify the configuration of markets into 10 types according to three criteria: number of traffic lanes, the application or not of road closure to traffic, and the number of the stall rows. Finally we discuss several noteworthy aspects in relation with the street markets in Japan, such as the flexibility of the setting, the narrowness of the market passages, the pedestrianization or the role of markets as a reinforcement of existing retail areas.