教職員からみた重度重複障害のある児童生徒の教育環境整備課題さいたま市立さくら草特別支援学校を事例として

摘要

以上、施設設計のーつの成果と課題が次に生かされるよう、情報を共有•蓄積していくことが重要である。重度重複障害のある児童生徒に求められる教育環境整備の課題をまとめる。1) 教育指導の観点から、学習生活拠点である教室は、マット上での臥位や車いす等での座位を取りながら学習•体調管理•休憩等、多様な授業展開が可能な広さが必要である。本事例では2教室合同授業において特に評価の声が得られた。ただし、可動間仕切り設置の際は音に敏感な児童生徒を考慮し、遮音性を検討する必要がある。2) 収納は、主に障害特性や職務環境の観点から、児童生徒個々で必要な教具教材•自助具等が異なることを踏まえた寸法•形状、また教職員が児童生徒の様子を感じながら取りに行け、児童生徒からは見えにくい配置•設えが求められる。3) 生活介助に係るトイレは、車いすやストレッチャーでの利用、休み時間に利用が集中すること、2対2の介助体制があること、介助の一連の動きとそれに必要なスペース、プライバシー配慮、緊急時の対応方法等の全体像を十分把握し、トイレは学習の場でもある教育指導の観点も含めた整備が必要である。4) 児童生徒の安全面の観点から、緊急時の教員体制を担保する情報伝達の方法、医ケアに即時対応できる電源設備、体温調整が難しい児童生徒にとってヒートショックを避ける空調管理、体勢保持の難しさや車いす•ストレツチヤー等の利用から怪我•転落•つまずき等に留意した建材•素材•物品の選定、マットとサッシュの位置関係、便房とベッドの位置関係等、諸処の考慮が必要である。5) 特に児童生徒の健康管理や生命の安全に関わる保健室•医ケア関連室は、車いすやストレッチャーでの入室を考慮した動線確保、養護教諭と看護師の連携体制の取り方、各種必要行為の把握、保健室と医ケア関連室の使い分け方等、多くを検討する必要がある。6) 施設環境の問題に対する教職員の対処として、おむつ替え時のつい立て、カームダウンや集中を促すスペース等の設置がみられた。これらを計画設計段階でどこまで取り入れるか、現場対応の余地を残しておくのか、配置や設え等、さらに追究すべき課題である。7) 重度重複障害により個別性の高さや、生命の安全に対する配慮が特に求められるからこそ、開設準備室等の計画設計段階において学校関係者との調整は重要であり、基本的な整備事項を落としてはならない。優先事項や代替手段の調整•相互理解も必要である。%The purpose of this paper is to discuss about the subjects of educational environment for special needs education. Conducting a case study at the Saitama Municipal Sakura-so School for students with profound multiple disabilities, we grasped the problems and those of the reasons about the school facility for the students by performing hearings and questionnaires survey targeting the teachers. Some issues regarding usability of this facility, even newly-built, were cleared. We showed how to relate the school planning to educational needs, assisting methods, characteristics of the disabilities, and the security and safety for students.