居間の変化と客間·寝室の配置からみた二階建て住宅の理念形成:明治後期～昭和初期刊行の住宅関係単行本の言説にみる近代都市独立住宅の二階建てに関する研究

摘要

This paper clarified the idea of 2 story Japanese urban houses with the discourses analysis 63 housing books published from the late Meiji to early Showa periods. We confirmed that the function of Japanese traditional housing room the"Ima"changed from private room into public room(as a western living room)during the Taisho periods, accordingly the discourses of drawing rooms arranged on 2nd floor were centralized in middle of Taisho period, the discourses or bedrooms were appeared from the late Taisho to early Showa period. We considerd that the function differentiation of the Ima lead to formed the 2 story houses idea.%日本の住まいにおける二階建ては、江戸期の町家や長屋などで確認できるが、一階と同じように二階を居室に充てることは上流階層の屋敷や別邸など一部に限られていた。そうした意味で一般的な住まいに二階が広く浸透し始めたのは明治期以降といわれており、二階化の要因のひとつとして「間取りの機能分化が進み、複数の部屋が必要になったこと」があげられる。本稿はこの観点から、とりわけ当時の「居間」(以後「居間」の「」を略す。)の変化について着目する。居間は従来、私室の機能を主として夜は就寝の場であり、客の応対にも利用されるなど多様な機能を包含していたが、大正期以降にいわゆる「家族本位」の住居観が形成されるに伴い、「家族団らん」の場や、欧米的な「リビングルーム」へのイメージ転換が積極的に試みられた。もちろん他の居室にも変化は見られ、互いに影響し合ったことも考慮すべきではあるが、居間は住宅の近代化のなかで間取りの機能分化に最も大きな影響をおよぼした居室であると考えられる。また当時の居間の変化については「建築家だけに通用する概念」という限定的な展開であったという解釈があるものの、住宅の間取りを近代的な価値観に対応させようとする理念的な動向を捉える意味ではむしろ重要であり、こうした動きのなかにこそ二階建て住宅の間取りに対する先導的な考えが含まれているとも考えられるのである。本稿は二階建て住宅の間取りの変化がどのような背景をもとにして形成されたのかを、居間の変化に伴う「客間」、「寝室」の居室の二階配置の動向から検討するものである(以後「客間」、「寝室」の「」を略す)。