マイニングソフトウェアリポジトリ研究を通じて

摘要

このたび，IPSJ/ACM Award for Early Career Contributions to Global Researchという栄誉めな賞をいただくことになり，大変嬉しく思います.本賞の選考委員の先生方，これまで一緒に研究をしてくれた共同研究者と研究室の学生たち，そして，家族に感謝したいと思います.今回の受賞テーマであるマイニングソフトウェアリポジトリは，大規模なソフトゥェア開発データを解析することで，ソフトゥェア品質の実証的な改善やモデル化につなげるなど，ソフトウェア開発にとって有用な知見を発見しょうという研究分野です博士前期課程のころからデータとにらめつこしながら実験•解析を行ってきました.私の研究テーマの1つ（かつ，本受賞と大きくかかわりのあるテーマ）に，Just-In-Time(JIT)ソフトゥェア品質予測モデルがあります.ソースコードの変更に対して，当該変更にバグが混入しているか否かを予測する，という研究テーマです.これは，カナダ•Queen's大学で博士研究員として研究者キャリアをスタートした直後に，当時のボスであるAhmed E. Hassan先生から「Yasu(ヤス），こういう問題はどうすれば解決できる？」とメールをもらったことがきつかけでした.当時のソフトウェア品質予測モデルの多くは，モジュール(パッケージやファイル）を予測単位としており，予測される範囲が大きいという課題が存在しました.それに対してJITソフトウェア品質予測モデルでは，ソースコードの変更に予測対象を絞るため，従来よりもバグと予測される範囲が狭く，開発者にとって，より有用な情報を提供できるという利点があります.