ソーシャル•マジョリティ研究の2つの側面

摘要

ソーシャル•マジョリティ研究には2つの側面がある.1つ目は，少数派が自らの困難を元手に多数派の社会的秩序を解明する新しい学術領域という側面である.社会学者Harold Garfinkelは，わざと秩序を乱す「違背実験」を通じて暗黙の社会的秩序を暴こうと提案したが，発達障害のある人々は日々，意図せず違背実験を生きている.多数派とのかかわりの中で彼らが直面する苦労や疑問から出発する本研究領域の方法は，違背実験をより発展させたものといえるだろう.加えて本研究領域は，発達障害を持つ当事者とさまざまな分野の研究者が，直接あるいは間接的な対話を通じて創造的に共同し，新しい知識を生み出す「共同創造」という先進的な方法も採用している.