裁判から見えるソフト開発の現場

摘要

ここ数年，専門委員という立場で裁判所の民事訴訟の現場に立ち会っている。近年の訴訟では，医療事故や建築に関する紛争，知的財産に関する争い，そしてコンピュータシステムの開発に開するトラブルなど，高度に専門的な内容に開連するものが増えてきている。このような専門的な訴訟で正しい判断を下すには，裁判官は争いに関する專門的な内容についての正確な理解が欠かせない。このためにそれぞれの分野の専門家が裁判に関与し，専門領域に関する正しい理解を助けるための説明など裁判官に対するアドバイザー的な役割を果たすものとして専門委員の制度が設けられている。筆者は，主としてソフトウェア開発にかかわる紛争の裁判に，IT分野の専門委員として数年前から関与してきている。