ICTを用いた運動•身体活動の測定方法と健康増進への活用

摘要

身体活動と疾病に関する研究の始まりは，ロンドン2階建てバスの運転手と車掌を対象に，虚血性心疾患の発症率を比較したMorrisら(1953年)によるものだといわれている.イギリスでは，その当時から身体活動の不足が多くの人々の健康障害を招く時代が来ることを予測していたのかもしれない.以降，生活習慣病の予防•改善に必要な身体活動量•活動様式についてさまざまな研究が行われてきたが,それは同時に身体活動•運動を正確に評価するための測定法を開発する歴史でもあつた.日常生活下の身体活動量を評価する方法として，長年，主に質問紙法が使われてきたが，測定技術の目覚ましい進歩に伴って，近年では加速度計法や心拍数法を採用する研究が増えている.さらに，これらのいわゆる"活動量計"は，安価に購入できるようになったことから，専門家のみならず，一般にも広く認識されるようになつた.しかしながら，各製造会社は何をどこまでどのように推定できるのかという情報を公開せず，売れる商品の開発に注力し，また使用側もそれらを十分理解しないまま利用しているという現状がある.そこで，本稿では活動量計の測定原理と限界,および活用の可能性について解説する.