観光情報学の最前線:観光の分散化と個人化を促進する集合知活用情報技術

摘要

観光は日本経済を支えるきわめて重要な成長分野であり，雇用拡大や地域活性化に大きな効果が期待できる.2015年の訪日外国人数が2012年から2倍増で約2,000万人に達した.この好機を活かして，地域観光をさらに活発させ，「観光先進国」を実現するには，ICTの利活用が必要不可欠であり，観光業界や行政などサービス提供側の主導で，自動翻訳，外国語表示，無料Wi-Fiの整備など，既存観光資源におけるおもてなしの向上や，ICTインフラの整備が今まで重点的に行われてきた.しかしながら，現状，急増する観光客は，東京·大阪·京都などの特定の有名な観光都市に集中し，社会インフラなどの負担および住民·観光客のストレスが大きい一方，いわゆる地方への経済効果の恩恵は限定的である.持続可能な観光立国·地域社会を実現するためには，多様な観光資源を開発して細分化する観光ニーズに応え，観光の個人化や地域·時期の分散化を実現して，サービス提供側中心の観光1.0から利用者側(ユーザ)主導の観光2.0へ進化していく(図-1)必要がある.