工場排水試験方法（JIS K 0102) (2019)の改正概要—アルキル水銀と六価クロムの分析一

摘要

工場排水試験方法は1964年に制定されて以降，追補形式の改正も含め，これまで11回の改正が行われており，今回が12回目の改正（追補）となる。2008年の改正では主として国際規格との整合化が行われた。その後の2013年，2016年，今回の2019年の改正（追補）では，省力化，低環境負荷，利便性向上のための新技術の導入が行われてきた。今回の改正の具体的な例としては，1)フエノール類，ふつ素化合物，全シアン及びアンモニゥムイオンの蒸留操作に小型蒸留装置を導入することで，また，全窒素及び全りんの分解前処理に耐圧•耐熱性ねじ口試験管とブロックヒー夕ーを導入することで，試料量及び試薬量を減らした。2)了ンモニゥムイオンの測定法として，試薬調製が容易なサリチル酸塩を用いるインドフェノール青吸光光度法を附属書から本体に移行した。3)ナトリウム及び力リウムの測定法としてICP発光分光分析法を採用することで，他金属との一斉分析を可能とした。4)アルキル水銀化合物の測定方法としてガスクロマトグラフィ一質量分析法（GC-MS法）を採用することで，放射線源を用いる電子捕獲検出器（ECD)を使用せずに分析可能とした。5)六価クロムの測定方法として液体クロマトグラフィ一誘導結合プラズマ質量分析法(LC-ICP-MS法）を採用することで，操作の簡易化を進めたことなどが挙げられる。本解説では，このうちの4)及び5)について，分析原理や実試料に適用する場合の留意点等を解説する。