マシンビジョンへの活用が進むマルチスぺクトル•イメージング(後編)

摘要

一見すると、ビーム•スプリッタを用いたアプローチと概念的に似ていることが分かる。大きく異なる点は二つあり、一つ目は、プリズム面に取り付けるのはセンサだけで、「カメラそのものを配置している訳ではない」という点である。つまりカメラ1台の中でビーム•スプリッタの構造が完結しており、複数台のカメラを組み込むよりもシステムを小型化できる。二つ目は、プリズムブロックには、光を分離するための干渉フィルタの役目を担う硬質のダイクロイック•コーティングが施されているため、まず分光が最適な状態であり、そして各センサがキヤプチヤしたいスぺクトル帯にとつて十分な入射光量が確保された状態で各センサまで届けられるという点にある。ビーム•スプリッタ方式では、入射光量は複数のチャンネルに分割される度に減衰するという事態に陥るが、プリズム分光ではキヤプチヤしたいスぺクトル•チャンネルが可視光かNIRかに関わらず、また広帯域か狭帯域かにも影響を受けずに、各チヤンネルのセンサともに全ての光量を受光することが可能だ。さらにべィヤーフィルタに不可欠なデ•ペイヤーと補間のプロセスがなく、どの波長帯でもセンサが本来持っている全画素によって撮像することができ、キヤプチャされた画像は完全な空間分解能を維持している。現在、当社のエリアスキャンカメラには、3チャンネルの波長帯を最大320万画素でキャプチヤし、最大100fpsで出力できるマルチスぺクトル•カメラをラインアップしており、また、ラインスキャンカメラでは、4チャンネルの波長帯を8192画素/ラインで捉え、35kHzのラインレートで出力できる機種を市場に投入する予定である。このアプローチによるマルチスぺクトル•キヤプチヤにも多少の制約があるとすれば、ある程度の大きさのセンサを複数搭載するとプリズムが大きくなるということであろう。しかしこれはべィヤーセンサ•カメラと比べるとカメラ本体が少し大きくなるという程度の話であり、ホイール利用、ビーム•スプリッタ、複数カメラといった手法よりははるかに小型で、マシンビジョンに組み込む際に筐体サイズが決定的な阻害要因となることもない。当社カメラの採用が好調に推移していることからも裏付けられている（第13図および第14図）。