非接触ICカードの負荷変調信号の誤差評価と離散フーリエ変換の近似法提案

摘要

ISO標準の非接触ICカードシステムでは，カードからリーダライタにデータを送る負荷変調（Load Switching：LS）信号の測定法が，互換性保証のために詳細に定められており，その中で離散フーリエ変換（Discrete Fourier Transform：DFT）のプログラムと測定誤差の許容値が推奨されている．しかし，DFTがもっている原理的誤差の影響が未解明であり，また測定機器精度の影響も未解明である．そのため現状ではLS信号スペクトルの正しい値が得られない上に，測定誤差の正確な論議もできない．本論文は最初に，測定機器に由来する誤差の評価式を導出する．また，窓時間と信号周期の比が整数でないことによってDFTが正しいスペクトル値を与え得ないという原理的欠点を補う“平均化法”という近似法を提案する．回路で作った擬似LS信号を用いた実験検証で，理論計算値と実験値のよい一致を得る．実際の非接触ICカードに“平均化法”を適用し，19％の誤差が1％に減小するという有用性を示す．