鋼の高温水蒸気酸化における水素の作用とそれに対する不純物の効果

摘要

フェライト系耐熱鋼の高温酸化は大気中に比べ水蒸気中で加速されることが知られており、その加速には水蒸気環境に起因する水素が重要な役割を果たしていることが指摘されている。また、その加速の度合いは、Crを含有する鋼で顕著であることも知られている。一方、鋼の不純物であるSは大気中高温酸化を助長するのに対し、水蒸気酸化を抑制することも実験的に明らかにされている。そこで、本研究では、（ⅰ）大気酸化と水蒸気酸化における酸化スケール構造およびそれに対するCrの効果、（ⅱ）水蒸気酸化後の試料における水素の存在領域、（ⅲ）酸化スケール中の金属元素の拡散に対する水素の効果、および（ⅳ）不純物の存在と水素のかかわりに着目し、Fe-Cr系鋼およびFe-Cr系合金について、水蒸気酸化機構を明らかにすることを目的とした。その結果、以下のことがわかった。