2章 中小才フィスビルにおける長期修繕計画の運用および修繕時期と費用の実態

摘要

国土交通省のマンション総合調査によると，マンション管理組合における長期修繕計画の作成率は9割に達していると報告された。区分所有(分譲)マンションは「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」により，建物の維持管理のための修繕の必要性を周知し，長期修繕計画の作成と適切な修繕を行うことで良好な建物ストックの確保を図ってきた。翻って，特に規制のない事業用賃貸建物，特に中小オフィスビルは長期修繕計画を作成しているのだろうか。作成していても計画に基づいて修繕を行っているのだろうか。実態は事後保全が主流ではないだろうか。理由は,計画の信頼性を判断する技術力や経験が浅く，見た目や感覚(使えるからもったいない)に従っているからではないだろうかと考えた。そこで「どこを修繕するのか」「適切な時期とはいつごろか」「どれぐらい費用がかかるのか」の実態を探るべく，筆者が所属する(一社)東京ビルヂング協会(以下，「東京ビル協」という)に調査小委員会を設置し，(一社)日本ビルヂング協会連合会(以下，「ビル協連合会」という)傘下の協会の協力を得て，長期修繕計画の作成と運用実態アンケー卜調査を行った。なお，本報告は一般的な事務所ビルのもので，店舗施設やホテル，病院など設備仕様や使用環境，運転時間が異なる建物には適用しない。