モニ夕ーより

摘要

本稿は，山陽新幹線の車両基地上空を跨ぐ広島高速5号線における矢賀こ線橋(3径間連続PC箱桁)の施工について述べられたものである.余談ではあるが，この車両基地への回送線(単線)には，かって田中賞を受賞したPC構造のヮーレントラス(岩鼻架道橋)が存在する.矢賀こ線橋(橋長：約322m,支間長：約83+152+84m)は車両基地の終端付近に位置し，20編成が留置可能な車両基地を横断することから，支間長が国内最大級となつている.品質確保と鉄道営業線上空での張出し架設における列車運転支障防止に対する取組みが分かりやすくまとめられており，興昧深く拝読させていただいた.品質確保の取組みでは，営業線への剥落防止対策として短繊維コンクリートを使用し，幅員の広い車両基地上空での長距離圧送に対しては入念に圧送試験，スランプ試験を行っている.また，長い内ケーブルに対してはグラウト注入の実物大試験を行って充填検知センサを用いるなどの対策を講じている.列車運転支障防止の取組みでは，新幹線架空線(25kV)に対して安全距離(3.0 m)を確保するために低床型ヮーゲンを採用し，営業線への施工資材や供用開始後の飛散物落下防止のために種々の配慮がなされていた.営業線近接工事にかかわることが多い私自身にとってとても参考になった.近年，PC長大橋の長期たわみの問題が顕在化しているが，予測値がどの程度であつたのかなど，設計の報告も紹介いただけると幸いである.