先進CFRPの作製プロセス·評価法と課題

摘要

本稿では，著者らのグループがここ10年程度携わってきたカーボンナノチューブ添加CFRP複合材料の開発事例を中心として，その製造法や評価方法，特に強度試験法，層間破壊靭性試験法などについて，ごく一部ではあるが試験方法と試験結果を紹介させていただいた.本来であればエアガンなどによる高速衝撃試験による評価結果や，損傷を受けた試験片の残留圧縮試験の評価法などについても紹介すべきであったが，誌面が尽きてしまった.どうかご容赦いただきたい.CFRP積層板の強度·靭性改善法としては，今回紹介したナノカーボン系のフィラをプリプレダ層間やマトリクスに添加する方法のほかに，従来から知られている高靭性エポキシプリプレグのように熱可塑性ビーズをマトリクスに加えて高靭性化する手法や，ナノシリカやナノクレイを添加する方法，試験片の厚さ方向にZpinを貫通させて層間を強化する手法，試験片作製時に層間に繊維を食い込ませて基材同士を物理的に結合させるZancharと呼ばれる手法など，さまざまな手法が提案されている.それぞれの層間強化法において一長一短があるが，重要な点は，層間破壊靭性値の向上と引き換えに生じる曲げ剛性や面内圧縮強度の低下をいかに最小限に食い止めるかという点にある.また,静的な破壊靭性値が向上したとしても，疲労亀裂進展特性が同様に改善されるとは限らない.さらにいえば，これらの層間強化法をもってしても，衝撃後残留圧縮強度の問題は依然として大きな課題として残っている.%In the present paper, the main production and manufacturing methods of carbon fiber reinforced plastics (CFRP) are reviewed. The authors group have continued to investigate the mechanical property CFRP laminates modified by carbon nanotube in recent years. Some experimental examples obtained by mode I and mode II fracture toughness tests, interlaminar strength test and fatigue crack extension tests of mode I delamination are described. Overview of the advanced CFRP composite material for the automobile and aircraft is outlined from a view point of nano-modified CFRP laminates.