自動運転の安全性を担保する法制度—近時の状況を踏まえて

摘要

自動運転を実現する技術の発展には目覚ましいものがあり，最新の技術を用いて車両を公道で自動走行できる時期が近づいているように感じられる.自動運転車を実際に公道で走行させるには，現行の法制度と比較しつつ，自動運転の特徴を踏まえた制度を検討する必要がある.現行の法制度では，自動車の公道での走行は原則として禁止されており，例外的に禁止が解除されるのは，運転者(Driver：D)が，その責任で，車両の走行を制御できる限りにおいてである.この禁止の解除は，免許(講学上の許可)という行政行為によってなされる(道路交通法(1)84条).免許の対象者は，基本的には自然人であり運転者となろうとする者である.運転者は，走行するべき車両内に乗り込み，車両の発進，走行，停止に係るすべての挙動を制御可能な場合に限り，免許を取得できる(道交法第2条1項18号参照).このように，現行法下では，①運転者は自然人であり，車内に常時いること，②運転者は，走行するべき車両の挙動を自らの意思で制御可能であること，③運転者による走行が許可されるのは，公道であって，その安全な挙動が確保されている領域であること，が前提とされている.