歯車技術の現状と将来

摘要

人は進化の過程で道具を使うことを覚え，他の動物に比べて種の優位性を確立した.その道具の進化した形態が機械である.人が必要とする仕事に対して機械がどのような機能をもつべきかは，人の欲望によって決まってくるものなので千差万別，時や地域ごとに異なってくる.そのため，機能を満たすために必要な動力のトルク•回転速度特性は無限の広がりをもっている.一方，機械を動かす原動機はその種類ごとに特有のトルク•回転速度特性をもっている.設計や制御でその特性を若干は変更できるが，基本的にはその固有のトルク•回転速度特性は変わらない.そして，たまたま機械動作部に必要とされる特性が原動機のそれと一致する場合には，ダイレクトドライブが最適な構造になる.しかし，一般に原動機のトルク特性は，機械動作部が必要とする千変万化のトルク•回転速度特性と一致しない.この特性を一致させねば機械はうまく動作しないので，両者の間に入って，その特性を一致させるための「必要悪」として，伝動装置が必要となる.