開かれた自画像，世界を映す鏡としての自画像

摘要

展覧会場をまわりながら，藤本に初めて会ったときのことを思い出していた。15年近く前のことである。そこにいたのは．それまで会ったことのない，不思譲なタイプの「すごい奴」だった。だいたい，通常の「すごい奴」というのは，何かをぶちまけられたら，それに対して自分ももっとぶちまけ返すか，鋭い批判を返すといった攻撃的な態度に出るものだが．藤本はニコニコとして話を聞いている。しかし時々投げかけてくる意見や質問など、なぜか話していて手ごたえがあって不思議に心地よいのだ。何かを受け入れつつ，それを独特の仕方で自分のものとする「藤本流」の原型が，すでにそこにはあった。