合板耐力壁と基礎の増打ち補強による木造3階建の耐震改修: 温泉旅館Y館

摘要

大正9年に建築された4階建の本館に併設されている3階建の木造温泉旅館である。1919年の市街地建築物法，1950年の建築基準法制定までは3階建，4階建の木造建築も多く建設されていた。この時期の多層木造建築は，日本の伝統工法を用いて建てられたものと，近代の建築工学に基づいて建てられたものの2種類に分けられる。耐震調査の結果，平面で改装が繰り返し行われた痕跡が見られたが，主に，内装あるいは床のたわみ防止といった目的と思われるものが多く，耐震改修を目的とした改修の痕跡は見られな力、つた。主な耐震要素は，短手方向が木製筋かい，鉄筋ブレース，土壁で，長手方向は土壁であり，伝統的な軸組工法に近代のブレースを追加した工法とみなすことができる。