腐食進行過程で生成する保護性さびの微細構造

摘要

コンクリート中の鉄筋が腐食すると，かぶりの剥落や構造耐荷力の低下につながる危険性があり，適切な腐食抑制対策が求められる．しかし，腐食のメカニズムには不明な点も多く，メカニズムに基づく効果的な抑制対策は確立されていないのが現状である．最近の研究により，水が腐食の進行に与える影響が大きいことが分かってきている．特に乾湿繰返し環境では乾燥時に生成したγ-FeOOH が湿潤時にFe3O4 に還元され，その際に鉄を酸化するために腐食の進行速度が大きいことが多い．一方で，高谷らは，乾湿繰返しによる腐食が進行する過程で結晶性の良い緻密なFe_3O_4 層が素地表面に形成する可能性があることを報告し，このさび層が高い耐食性を有していることから保護性さびであるとしている．本研究ではその鉄筋が耐食性を示す要因の解明および生成環境を明らかにするためにラマン分光分析およびSPM 分析を行った．