安鶴宮城南中門の上部構造についての復元的考察: 高句麗時代建築の復元的研究 2

摘要

安鶴宮は平壌市街東北にある大城山城南麓に位置する宮殿 遺跡である。『新増東国輿地勝覧』巻五ー?長安城条に「高句 麗平原王ニ八年　自平壌移居于此　城中安鶴宮古址。」とあ り、古くから高句麗時代の宮殿跡と認識されてきた1）。1958 年から開始された発掘調査によって、城門を持つ宮城（ー辺 約622m）内に、大きく分けて5 つの宮殿区の存在が確認さ れている2）（図1）。なかでも宮城中軸線上に位置する遺構群 は規模や平面形態などから安鶴宮の主軸をなす建物と考えら れ、その最も正面に位置するのが宮城南中門である。この遺 構は配置や規模から安鶴宮を代表する門で、かつ最も正面に 位置することから宮殿全体のイメージを象徴するような建物 であった可能性も高い。するとその意匠計画や上部構造を知 ることは、当時の宮殿建築を考える上で非常に重要と思われ るが、発掘調査では上部構造を直接的に示す資料などは見つ かっておらず、詳細は不明である。そのような中、礎石据付 痕跡の規模?配置などから復元案も提示されているが3）、い まだ検討すべき課題が多いのも事実である4）。そこで本稿で は発掘調査で見つかった遺構を再度検討し、宮城南中門の上 部構造を復元的に考察することで、高句麗さらには古代東ア ジアにおける宮殿?大型門研究へのー助とすることにしたい。