二者同調歩行中の「弱い」リーダーに見られる歩行パターン変化：身体的自己における明示·暗示的な他者性の考察

摘要

古典的なモデルにおいて，身体的自己は自らの動作に関する予測とその結果の一致により構成されると考えられてきた．一方で，人間の自己認識は事後解釈的である事という報告もあり，このことは古典的モデルに矛盾する．これらの両側面を統合的に解釈するため我々は過去の研究で「他者性」を内包する身体的自己のモデルを提唱した．本研究では，同調現象を元にこのモデルを実験的に検証した。即ち，二者の同調歩行において，リーダー·フォロワーの関係性を変化させた時，各人の歩行パターンがどのように変化するかを分析した．結果，リズム統制の役割が弱いリーダーにおいて，当人の歩行パターンに無意識的であると思われる変化が観察された．これは，同調する二者において，外部に存在する「他者」が、身体的自己における「他者性」に混同された結果であると考えられる．