シェイクスピア作品における登場人物相対関係の「起承転結」可視化

摘要

文学作品が読者を魅了する要因は，登場人物の個性の面白さとともに，それぞれの人間関係のダイナミズムにある．これまでに多くの文学作品が電子テキスト化され，近年急速に発展した情報処理技術によって，物語の登場人物間のダイナミズムを可視化できるようになってきた．著者らは物語に登場する単語の頻度分布から，物語の構造を可視化する様々な方法論を提案してきた 1)．これを応用し，物語のタイムライン上における登場人物の頻度分布から，シェイクスピア作品の全登場人物の相互相関関係を解析し，独自の力学的モデルによって物語全体における人物間ダイナミズムを可視化してきた 2)．また最近では，シェイクスピア戯曲の様々な作品（史劇，悲劇，喜劇を含む）を対象とし，登場人物一覧を予め入力の上，それらの相対関係を二次元周期境界座標上に図式的に描画した 3)．本研究では，これをさらに進め，ストーリー展開を考慮した時間軸を起承転結のように４段階分割し，登場人物関係の時間発展の可視化を試みた．また，ラグランジュ的な視点を導入し，ある特定の登場人物から観た人間関係の変遷の可視化についても行ったので，その結果を報告する．