ケーブルを有した機械システムの運動解析および制御に関する研究

摘要

ケーブルを有した機械システムの例として，建造物点検用の小型ヘリコプタや海中探査用ロボットが挙げられる．近年，高度成長期に建設された高速道路や橋梁の老朽化が進hでおり，建築物の検査?メンテナンスが急務である．従来の検査では，足場や大型クレーンを用いて人手による目視検査や打音検査を行なうことが多いが，足場の建設や大型クレーンの出動にコストや検査時間が必要である．そのため，詳細な検査が必要な建築物を抽出するための予備検査を低コストかつ短時間で行うことができる簡易的な検査方法が求められている．その方法の一つとして，カメラを搭載した小型ヘリコプタを利用した目視検査が挙げられる．小型ヘリコプタを用いた目視検査も近年普及してきたが，バッテリーを搭載したものでは飛行時間が短く，目視検査をするには不十分である．その対策として，電源容量のある地上から小型ヘリコプタにケーブルをつないで給電することで，飛行時間の問題を解消できる．さらに，カメラ画像などの大容量データを有線で確実に取得でき，地上の高性能コンピュータを用いてリアルタイムで解析できるようになる．また，ロボット活動を円滑に行うには，通信および位置情報が必要である．海中での無線通信には音響通信が用いられるが，音波の伝播速度は遅く，また，伝送密度も小さいので，陸上のロボットのようなリアルタイムの遠隔操縦は不可能である．したがって，遠隔操縦のためには，ロボットにケーブルを取り付けて海上とつなぎ，通信が可能となる．このように，通信状況の悪い場所であってもロボットからのリアルタイムの情報の確保と操縦を可能にする．しかし，ケーブルを曳航することにより，ケーブルの張力や慣性が外乱となり，位置や姿勢の制御に悪影響を与える可能性がある．