音響共鳴現象を利用した塗膜厚さ測定のための超音波探触子の選定について

摘要

防錆，耐食性の向上を目的として，工業製品の鋼表面には通常塗装が施される．品質保証のための塗膜厚さ測定には利便性に優れる電磁式膜厚計が広く利用されているが，その対象はセンサがアクセスできる表面塗膜に限られる．裏面塗膜など，影部の塗膜厚さは超音波式膜厚計により計測できるが，従来のパルスエコー方式では極薄い塗膜に対して塗膜の表裏面エコーが重畳するため適用が困難となる．著者らはこれまでに塗膜の表裏面エコーが重畳する状況下で観察可能な音響共鳴現象を利用した鋼板塗膜の膜厚計測手法を開発してきた．最近は鋼板両面塗膜の音響共鳴現象を同時観察することに成功し，両面塗膜の厚さを同時に測定することに成功している．本報告では，音響共鳴現象を利用する膜厚計測方法において，両面塗装鋼板の塗膜厚さを集束型および非集束型超音波探触子を用いて測定し，塗膜厚さ計測精度に及ぼす音波集束の影響を明らかにする．さらに知見に基づき，実際に製造現場で本手法を活用する際の超音波探触子の選定指針について述べる．