マットレスに押し付けられた骨突起部軟組織の体積変化による微小血管の変形解析

摘要

同じ体位を持続すると骨突起部の軟組織が圧迫され続けて虚血状態に陥り，組織が壊死して褥瘡を発症する．褥瘡は高齢者に多く，難治癒のため，褥瘡の予防は高齢化社会の最重要課題の一つである．著者らはこれまで山本らの実験及び有限要素解析の結果を参考にして，骨突起部と皮膚·皮下組織からなり平面ひずみ状態にある二次元の有限要素モデルを作成し，骨突起部直下で皮膚と皮下組織それぞれの中央部に存在する微小血管の変形を調べてきた（山田·柴尾，2010）．軟組織を非圧縮超弾性体としてモデル化して解析した結果，マットレスと皮膚との接触圧が約10kPa のとき，軟組織内の微小血管はほとhど変形しなかった．軟組織に含まれる豊富な水分は粘弾性特性を生じ，組織間隙や微小血管の中に存在する水分は長時間の圧迫の下では移動するであろうことから，長い時間スケールでは軟組織は圧縮性を有すると考えられる．そこで粘弾性と圧縮性を考慮した超弾性体モデルの有限要素解析を行ったところ，微小血管に顕著な変形が見られた．本研究では，前報の有限要素モデルの血管内腔に自己接触条件を加えるなどの改良を加えるとともに，超弾性発泡材料モデルのポアソン比を変えることによって，軟組織の体積減少率が微小血管の変形に及ぼす影響を調べた．