超音波診断における心臓癒着評価技能の技術化·デジタル化に関する研究（第2報）－ECG 信号を利用した癒着評価のデジタル化

摘要

ロボット技術を利用して人間の熟練した技能を再構築する，言わば"技能の技術化·デジタル化"がテクノロジーの発達とともに可能になりつつある．すでに製造業分野では，人間では不可能な高精度の作業がロボットによって実現されている．高度な技能を要求される医療分野においても医療診断·手術ロボットの開発により熟練した専門医のように人体に対して安全に接触動作するとともに，人間の能力を超える，高精度な診断·手術を実現することが期待されている (Fig.1)．中村らは高速度カメラを利用し，臓器とスレーブロボットを同期させることで，心臓外科手術を支援するシステムを提案している心臓外科手術後の癒着は一般によく知られる現象であり，再手術の可能性に重大な影響を与える．このため，心臓癒着を評価しようとする試みがこれまでになされている」．しかしながら，上記の従来研究では，癒着の評価が専門医の主観に大きく依存するなど，心臓癒着の客観的かつ定量的な指標になっているとは言えない.そこで，本研究では，超音波診断技術(Fig.2)およびロボットビジョン技術の利用により，心臓癒着度合いを客観的かつ定量的な指標化することを目的とする．このうち，本報では，ECG 信号の利用により，心臓癒着評価をデジタル化する手法を提案する．超音波検査法は低侵襲であり，ベッドサイドで施行可能であるが，測定者の違いによるデータの変化がおこり得る．本研究により，測定手技·条件の標準化が促進されるものと期待している．