紫外光および紫外光励起活性酸素によるPDMSの表面改質

摘要

事故や疾患により失われた組織や器官の治療に細胞を用いる再生医療が注目されている．組織や器官の元となる体性幹細胞の多くは接着細胞であり，足場となる細胞培養基板のぬれ性や表面粗さ，剛性などの性質が接着や伸展，分化に影響を与えていることが報告されている1）．そこで細胞培養基板としてポリジメチルシロキサン（PDMS）に注目した。PDMSはシリコーンゴムの一種であり剛性を変えることができ，酸素透過度が高く，透明性に優れるといった特徴を持つことから剛性が変えられる細胞培養基板として研究されている．しかしPDMSは細胞接着性に必要な親水性官能基が乏しいため細胞培養に適した表面状態ではない．そこで一般的には酸素プラズマ処理による表面改質をおこなっている2）．酸素プラズマは電離によって生じた荷電粒子を含hだ酸素であり，高エネルギーかつ反応性が高いため材料表面を酸化することで親水性官能基を付与することができる．酸素プラズマとは異なる表面改質技術として活性酸素に注目した．活性酸素は特定の波長の紫外光により励起させた酸素の活性種であり，強い酸化力をもつ3）．したがって酸素プラズマと同じく材料表面を酸化することで親水性官能基を付与する表面酸化処理技術として用いることができる．本研究では活性酸素および紫外光による表面改質と酸素プラズマによる表面改質の効果を調査し，比較検討した．