実すべり現象と分子動力学シミュレーションの歩み寄りに関する検討－ナノインデント試験を用いた二固体間ポテンシャル関数の導出

摘要

光学レンズ用金型などの超精密部品の加工には，単結晶ダイヤモンド工具による無酸素銅の超精密切削がよく用いられている．銅線や電気接点にも銅系材料が用いられている．このように，銅系材料の摩擦·摩耗現象の把握はとても重要である．一方，各種しゆう動面における摩擦の低減に対する研究·開発は日々続けられているが，それを実機的に行うには，膨大なコストと長い期間を要する．その解消手段の一つとして，摩擦·摩耗シミュレーションによる現象理解に対する期待は高く，中でもとりわけ現象の根本的理解に役立つとされる分子シミュレーションは重要といえる．しかしながら，実現象とシミュレーションとの隔たりはなかなか解消されないままである．本研究では，実際のナノ接触実験から得た結果を用いた原子間ポテンシャルの開発とそれを使用したすべり過程の分子動力学シミュレーションを目標としている．本報では，基本となるナノ接触実験とシミュレーションの結果比較による，単結晶ダイヤモンドと銅単結晶間の界面における原子間相互作用の探索を試みた結果について報告する．