工業生産されたナノ材料のリスク経営問題

摘要

ナノテクノロジーが、今までにない機能とそれに伴う“すばらしいこと”をもたらすのではないかという期待がふくらむ一方で、この技術が人の健康や自然環境に負の影響（リスク）を与えるのではないかとする意見も広がっている。有害性を示唆する報告もある。過去の不祥事の例を引いて、疑わしいから使用をただちにやめよという意見もある。しかし、不安があるから、疑わしいからと言ってやめるとなると、多分新規技術は生まれなくなってしまう。技術は、研究室からのみ生まれるのではなく、ある程度使いながらでなければ生まれないものだからである。どうすればいいか？これが新技術のリスクガバナンス問題である。ガバナンスの日本語訳は統治だが、分かり易く言えば管理、経営である。リスク管理の基礎になるのがリスク評価である。